水素利用拡大に向けた水電解・燃料電池の研究開発の強化

飯山 明裕

2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、水素は、カーボンニュートラルに必要不可欠な二次エネルギーと位置づけられ、燃料電池は水素による脱炭素化のキーデバイスとされました。2025年には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ」(「NEDO技術ロードマップ」)を改訂し、HDV(大型・商用モビリティ)などにおける2035年以降の技術目標が示されました。

本センターは、燃料電池の本格普及に資することを目的として、山梨県および関係省庁の絶大なご支援を得て、2008年4月に設立されました。

2008年~2014年には経済産業省、NEDOが委託するプロジェクトにおいて、反応や劣化のメカニズムに関わる知見並びにナノテクノロジー等の先端技術の融合に取り組みました。

2015年~2019年には、NEDOが委託するプロジェクトにおいて、出カ・コスト・耐久性の総合的性能を10倍程度向上させる目標を達成しました。

2020年~2024年には、NEDOが委託するプロジェクトにおいて、セラミックス担体触媒や、規則的メソポーラスカーボン担体触媒、および化学的耐性と機械的強度を両立した炭化水素系電解質膜やガス透過性に優れたアイオノマーの研究開発に取り組みました。同時に「プロトン交換膜型水電解装置用アノード触媒の貴金属量低減」、「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究」、「GDL一体型フラットセパレータ」、「静電スプレー法」のNEDO委託事業に取り組みました。

現在は、NEDO技術ロードマップ目標の実現に資する次の7つのNEDO委託事業に取り組んでおります。①自動実験を用いた燃料電池用次世代触媒・触媒層、②セラミックス系カソード触媒(層)、③広温湿度域にて作動可能な高プロトン伝導性電解質膜・アイオノマー、④静電スプレー法に関する要素技術、⑤ポーラスリブGDL/MPLに関する要素技術、⑥プロトン交換膜型水電解装置用革新的低貴金属担持アノード触媒・MEA、⑦アニオン交換膜型水電解装謹用触媒・電解質・MEA。

本センターは、これらの研究開発成果を広く産業界の皆様にご活用いただき水素や燃料電池の利用を飛躍的に拡大できるよう、多才な研究者陣容と世界トップレベルの先端設備をフル活用いたします。併せて産学官の共同研究、学部から大学院までの教育にも積極的に関わり、先端的研究成果の創出と当該グリーンエネルギー分野を牽引する研究者・技術者の育成に取り組んでいきます。

皆様方の温かいご支援とご指導をよろしくお願い申し上げます。

国立大学法人 山梨大学
水素・燃料電池ナノ材料研究センター長
飯山 明裕