研究内容

燃料電池の本格的普及には、コストの低減ならびに耐久性及び信頼性の向上という多様な要素を満たす革新的なブレークスルーが産業界より待望されており、そのためには、サイエンスに立ち戻った研究開発を行うことが必要です。

HiPer-FC(High Performance Fuel Cell)プロジェクトは、2008年4月にNEDO技術開発機構から山梨大学が中心となり受託した7年計画のプロジェクトであり、反応、劣化メカニズムに係わる知見ならびにナノテクノロジー等の最先端技術の融合により、触媒・電解質膜・MEA等の燃料電池の新材料研究を実施し、高性能・高信頼性・低コストを同時に実現可能な高性能セルのための基礎技術を確立することで、燃料電池の本格普及に資することを目的としています。

プロジェクトの正式名称は、「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発事業/劣化機構解析とナノテクノロジーを融合した高性能セルのための基礎的材料研究」です。

研究開発項目

劣化機構解析
各種劣化モードにおける加速試験法を開発するとともに、劣化機構解析結果を新材料開発にフィードバックするために、電極触媒の負荷変動及び不純物による劣化速度と機構の解析、炭化水素系電解質膜の高温・低加湿下における劣化速度・機構の解析、並びに、電池内反応分布と劣化機構の解明等を実施する。
高活性・高耐久性の触媒開発
高活性と高負荷変動耐性を両立させるために、劣化機構解析等で得られた知見等に基づき、高活性・低溶解性白金合金触媒及び高電位安定性担体・担持触媒並びに高活性・高耐久性・低S/C燃料改質系触媒等の開発と評価を実施する。
広温度範囲・低加湿対応の電解質材料開発
自動車用燃料電池で想定される広温度範囲、低加湿条件に対応するために、高プロトン導電率・高形状安定性炭化水素系電解質材料及び高酸化・高加水分解耐性炭化水素系電解質材料の開発と評価並びに高温低加湿および低温での特性改善等を実施する。
自動車用MEAの高性能・高信頼化研究
自動車用燃料電池において想定される作動条件に対応した、高触媒利用率炭化水素系MEA並びに温度サイクル・負荷変動安定炭化水素系MEA等の開発と評価を行う。

研究目標

-30℃で起動し、最高100℃での作動が30%RH(相対湿度)で可能であり、効率は定格出力の25%で64%LHV、耐久性は5,000時間作動及び6万回の起動停止が見通せるMEAを開発する。なお、自動車用を想定した条件においては、電解質は量産時に1,000円/㎡を見通すものとし、電極触媒の白金等の貴金属使用量は0.1g/kW以下とする。

研究開発体制

プロジェクトマネージャーの下に、山梨大学を中心として、(株)カネカ、(株)東レリサーチセンター、富士電機ホールディングス(株)、田中貴金属(株)、(株)島津製作所、パナソニック(株)、早稲田大学等が共同して研究を進めています。

Hi-PerFCプロジェクト